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平井晴子~女子7人制ラグビー日本代表とオリンピックを目指す! 後編
カテゴリ: インタビュー

トワテック リサーチ

 

セルフケアの徹底が基本

 

 

女子7人制ラグビーの日本代表チーム(サクラセブンズ)のトレーナーとして、フィジカル面から選手達をサポートする平井晴子。彼女が重視しているのは選手によるセルフケアの徹底だという。

 

「セルフケアを徹底させることで、手技や物理療法によるメンテナンスを本当に必要とする選手に十分な時間をかけることができます。私がチームに合流した頃は受け身な選手が多く、1日10人以上の選手が“なんとかしてください”と訴えて施術を求めてきました。こういう状況だと本当にメンテナンスが必要な選手に対する施術がおざなりになってしまう可能性があります。この状態を改善するために選手によるセルフケアを重視するようになりました。最近ではセルフケアに対する意識が高くなってきたため、私が手技や物理療法を通して選手をサポートする人数は1日2~3人程度になりました。そのぶん一人一人に対する施術の密度はあがっています。また、フィジカル面の管理を選手にまかせっきりにしてしまうと、トラブルの予兆を見落としてしまう可能性もあるので、顔を合わせて話す時間は今まで以上に大切にしています」

 

女性は一般的に痛みに強いと言われている。平井自身もスポーツの世界にいて、そう感じることも多い。そんな彼女達の自己申告を信じきってしまうと、取り返しのつかないことになる可能性もある。今のサクラセブンズのメンバーは特にその傾向が強く、止めることも大変だという。

 


 
「どの選手も純粋にラグビーが大好きですからね。私が“今の状態でプレーを続けたら、絶対に身体が壊れる”と判断して練習を止めようものなら“私からラグビーを取り上げないでください!”って顔をするんです。そんな顔をされると心も痛みますからね。ただ、数日後、数ヶ月後の試合のことを考えると絶対に止めないといけない。7人制ラグビーは非常に激しいスポーツです。命に係わる最悪の事態だって起こらないとは限らない。なので“これはまずい”と判断したら、泣こうが喚こうが休養をとってもらいます」

 

 

セブンズでは2日間で大会のプログラムを全て消化する。そのため普段の練習も1日に3試合することを想定したスケジュールが組まれている。そんな激しい練習をこなす選手たちを平井さんはどんな形でサポートしているのだろう?

 

「基本的には肉体的な疲労をいかに早くリカバリーするかに重点を置いています。手技としてはPNFを利用することが多いです。また、メンタル面のサポートにも力を入れています。メンタルが落ちてくると選手のケガにつながりますからね。メンタルケアの専門家ではありませんが、トレーナーという立場でできる範囲のことはするようにしています」

 

使命はケガをしない身体づくり

 

 

サクラセブンズは2016年に開催されるオリンピックでの金メダルを目標に掲げている。この目標を実現するためには世界一の練習をすることが求められる。これはフィールドを駆ける選手──、そして彼女たちを支えるスタッフの共通認識だという。

 

「世界一の練習をするためには、選手がフィールドでプレーし続けないといけない。その前提条件がケガをしない身体だと思うんです。その部分でトレーナーが寄与できることは大きいと感じています。今いる代表チームの選手もそうですが、今後、オリンピックで活躍することを夢みている選手たちにとっても、女子ラグビーという競技をケガの少ないスポーツにしていきたい。正確な統計データはありませんが、女子ラグビーは最もケガの発生率が高い競技のひとつだと思います。女子ラグビーの裾野を広げるためにも、ケガをしない身体作りは私の使命だと考えています」

 

この言葉を裏付けるように、2013年には医師をはじめとした専門家とチームを組んで“膝のケガの障害予防のプログラム”の作成にもたずさわっていたという。そして各種専門家との交流を通して「トレーナーとして広い視野を持つことの重要性を学んだ」と平井さんは言葉を続ける。

 

「チームのパフォーマンスを向上するためにはどうすればいいのか? これを突き詰めるにはトレーナーの知識と技術だけでは不十分です。逆に言えば自分の知識と技術に固執していては、チームのパフォーマンスを向上させることなんてできません。専門外のことは専門家に協力をあおぐ。そうやって知識と人脈を広げて行けば、自分一人では解決できない問題を抱えた選手への対応もできるようになるはずです。そういう意味では人材と情報の交通を整理して、各選手が抱える問題に対して適切なアドバイスができるトレーナーになれればなとは思っています」

 

高校のアメリカンフットボール部でトレーナーという仕事と出会い、アメリカで多くのスポーツの現場を経験した。そして今、サクラセブンズという日本を代表するチームのトレーナーとして働くこととなった。アスレティックトレーナーとしての仕事に変化はあったのだろうか。

 

「アスレティックトレーナーとしてやることに変わりはないです。選手を第一に考えるという意味では、クラブでも、大学でも関係ありません。ただ、求められる結果が年に一回の地元の大会や県大会の優勝じゃないということくらいですね(笑)。ただ、日本代表ということで応援してくれる方がたくさんいるので、とても心強いです。“日本が強くなるためなら喜んで協力するよ” と言ってくださる方が増えたので、出来ることの幅が広がったと思います」

 

話を聞いていて、後ろ向きな言葉が全くといっていいほど出てこなかった。困難に直面しても、常に前を向いて対処している印象を強く受けた。

 

最後に、「仕事、楽しそうですね」と声をかけた。

 

「楽しいです、すごく楽しいです(笑)。遠征が多いので大変だね、って言われることもありますが、それもまた楽しいです。いろんな国で、いろんな人と交流できて、留学時代の仲間と再会することもありますし、全然つらいっていうのはないですね」

 

サクラセブンズが世界一になる日、その歓喜の輪の中には平井晴子トレーナーの笑顔もきっとあるはずだ。

 

プロフィール

写真 平井晴子
1981年大阪生まれ。立命館大学卒業後、製薬会社へ就職、その後アメリカ、サンディエゴ州立大学でアスレティックトレーニングを学ぶ。帰国後、整骨院や専門学校の講師などを経て、2013年4月から女子7人制日本代表チームのトレーナーとなる。サンディエゴ州立大学で学んだPNFは、得意なアプローチとして今も活用している。
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