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連載:創意工夫で引き出す「棒灸」の魅力。東京衛生学園専門学校中医臨床センター長・齋藤隆裕先生インタビュー

【前編】中医学における棒灸の利用
カテゴリ: インタビュー

トワテック リサーチ

煙のせいで日本では敬遠されがちな棒灸を、より効果的に、そして使いやすくするために、独自の土器製棒灸カバーを開発・作製した齋藤隆裕先生。現在、東京衛生学園専門学校の中医臨床センターではセンター長として、また治療院「鍼灸らせん堂」の院長として指導や治療にあたっているが、カバーを開発し始めたのは学生時代だという。自らを“治療道具マニア”と称し、気になる道具は入手して実験してみるという齋藤先生に、棒灸の魅力や活用法についてうかがった。

 

 

中国ではメジャーな棒灸も、日本では煙が課題

 

 

艾を棒状に圧縮し、和紙で包んだ棒灸が中国で使われるようになったのは、明の時代だと言われている。

「古く『雷火針』と呼ばれたものは、漢方薬をねりこんだ棒灸『薬絛』で、皮膚の上に紙などを挟んで棒灸を押し当てる、枇杷灸のような使い方をしていたようです。今は、皮膚に近づけて温感を出しながら、経絡に沿って流すように動かしたり、回旋させたりするのがスタンダードな使い方。鍼の雀啄法のように、皮膚の近くで上下に動かす使い方をすることもあります」

棒灸の当て方を変えることで、「補法」と「瀉法」の使い分けもできるという。

「例えば、冷えのある部分には、皮膚から少し離した位置でジワジワと温めていきます。風邪で悪寒が強い場合などは、皮膚に近づけていって患者さんが熱いと感じたら離すという使い方をします」

一般的に、棒灸はどのような症状に適しているのだろうか? 

「温めや鎮痛に効果的なので、冷えや痛みに悩んでいる人に使われることが多いです。リウマチ性の疾患など、湿気を取り除くときにもよく使われますね。弁証でいうと、陽虚証や実寒証の人に向いています。逆に適していないのは、熱化しやすい人など、基本的に温熱刺激が適さない疾患とほぼ同じと考えます。
私が研修を受けた中国の病院では、お灸といえば棒灸がよく使われていました。棒灸と言っても、艾だけで作られた『純艾絛』と呼ばれるものや、薬効成分が入った『薬絛』など、いろいろな種類があります」
 

棒灸はそのまま使うのが一般的だが、ひと工夫すれば灸頭鍼にも使えるという。

「適度な大きさになるように、画鋲などで棒灸側面にぐるりとミシン目をつければ、好きな長さで簡単にもぎ取れます。1.5センチほどに分けた棒灸に、同じく画鋲などで竜頭を挿入する穴を開け、そこに鍼柄を挿入すれば灸頭鍼の完成。
棒灸は圧縮されているので、手でまとめた艾より密度があります。鍼に乗せても安定感があるので落下事故も少なく、長時間燃えるので使いやすいと思います」

 

中国ではメジャーな棒灸だが、日本では鍼灸を学ぶカリキュラムの中で、お灸の1種類として紹介する程度だという。日本であまり使われていない理由の1つに、煙の問題があるようだ。

 

 

「棒灸はお灸の中でもマイルドな刺激ですから、患者さんへのお灸療法の導入としてもいいと思うんですが、とにかく煙がすごいんですよね。中国留学中ですが、宿舎で使用していたら火災警報器が鳴ってしまったこともあります。
マンションの一室で治療されている先生や、施設などに往診に行く場合は、煙や匂いの問題があり、使用することが難しいでしょう。そのような環境でも棒灸の使用を可能にするのが、この土器製の棒灸カバーです。カバーを使うことで煙を軽減させ、より効果的に使うことができるようになります」

 

 

プロフィール

写真 齋藤隆裕
鍼灸師・按摩マッサージ指圧師。中国医学修士(鍼灸推拿系)。学校法人後藤学園、東京衛生学園専門学校、中医学研究所 中医臨床センター センター長。国立筑波大学 理療科教員養成施設 講師。日本中医食養学会 講師。正中山遠壽院「根本御祈祷系授的傳加行所<荒行堂>百日大寒行」東洋医学顧問。「鍼灸らせん堂」院長。『齋藤式棒灸カバー』は15年ほど前から講習会や勉強会で作製方法と施術テクニックを伝授している。
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