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連載:創意工夫で引き出す「棒灸」の魅力。東京衛生学園専門学校中医臨床センター長・齋藤隆裕先生インタビュー

【中編】“治療道具マニア”が開発した「齋藤式棒灸カバー」活用術
カテゴリ: インタビュー

トワテック リサーチ

煙のせいで日本では敬遠されがちな棒灸を、より効果的に、そして使いやすくするために、独自の土器製棒灸カバーを開発・作製した齋 藤隆裕先生。現在、東京衛生学園専門学校の中医臨床センターではセンター長として、また治療院「鍼灸らせん堂」の院長として指導や治療にあたっているが、 カバーを開発し始めたのは学生時代だという。自らを“治療道具マニア”と称し、気になる道具は入手して実験してみるという齋藤先生に、棒灸の魅力や活用法 についてうかがった。

 

 

土器製の棒灸カバーで煙と臨床家の負担を軽減

 

 

棒灸はそのまま使うのが一般的だが、ひと工夫すれば灸頭鍼にも使えるという。

「適度な大きさになるように、画鋲などで棒灸側面にぐるりとミシン目をつければ、好きな長さで簡単にもぎ取れます。
1.5センチほどに分けた棒灸に、同じく画鋲などで竜頭を挿入する穴を開け、そこに鍼柄を挿入すれば灸頭鍼の完成。棒灸は圧縮されているので、手でまとめた艾より密度があります。鍼に乗せても安定感があるので落下事故も少なく、長時間燃えるので使いやすいと思います」

今ではほとんどの治療に棒灸を用いているという齋藤先生が、棒灸を知ったのは学生時代の授業中。そのとき、まず道具の方に興味を持ったというのが“治療道具マニア”の齋藤先生らしい。

「授業の中で、お灸の1種類として棒灸について習い、棒灸器(カバー)があることも知りました。その棒灸器を買ってみようかなと思ったのですが、自分で作れそうな気がしたので、陶芸用の粘土を買ってきて家のガスコンロで焼いて作りました。出来上がったカバーをつけて棒灸を使ってみると、煙が非常に少なくなることがわかったんです」

棒灸カバーを作ること自体が楽しくて、使いながら改良を重ね、約10年かけて現在のお茶碗型にたどり着いたそうだ。材料も、家庭用オーブンで焼けるオーブン粘土へと変わり、より手軽に作れるようになった。このカバーを使うだけで、あれだけモクモクと出ていた煙がお線香1本分にも及ばない程度になる。

「カバーとセットで使うと患者さんにも喜ばれ、棒灸のよさをどんどん実感しました。特に印象深かったケースは、自分の祖母です。祖母は末期ガンと診断され、在宅療養となりました。食欲もなくなり痩せはじめていたのですが、試しに棒灸をやり始めたら、すぐに食欲がでてきたんです。モルヒネのパッチも併用していましたが、痛みの軽減にも棒灸がずいぶん役立ちましたね。余命半年ほどだと告げられていたにも関わらず、祖母はそれから2年間、亡くなる直前まで自分で食事を摂ることが出来ました。レントゲンを見た医師が『こんな状態でそれほど痛みが少ないなんて驚きだ』と言っていました」

 

 

また、棒灸カバーを使うことで、煙を軽減させるだけでなく、臨床家の負担を減らすこともできるそうだ。

「灸療は、患者さんから目がはなせなくなってしまいます。そして患者さんが増えるほど忙しくなります。それが続くと、臨床家自身がベストな状態でいることが難しくなるでしょう。棒灸カバーを使えば、ほんの少しだけ手があきます。その少しの間にまた別のことができるので、水を飲んだりカルテを見返す時間を作ることができます。
これって心の余裕なんです。治療家を続ける上で、とっても重要なことなんですよ」


 

 

プロフィール

写真 齋藤隆裕
鍼灸師・按摩マッサージ指圧師。中国医学修士(鍼灸推拿系)。学校法人後藤学園、東京衛生学園専門学校、中医学研究所 中医臨床センター センター長。国立筑波大学 理療科教員養成施設 講師。日本中医食養学会 講師。正中山遠壽院「根本御祈祷系授的傳加行所<荒行堂>百日大寒行」東洋医学顧問。「鍼灸らせん堂」院長。『齋藤式棒灸カバー』は15年ほど前から講習会や勉強会で作製方法と施術テクニックを伝授している。
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