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連載:創意工夫で引き出す「棒灸」の魅力。東京衛生学園専門学校中医臨床センター長・齋藤隆裕先生インタビュー

【後編】「齋藤式棒灸カバー」で広がる棒灸の活用法
カテゴリ: インタビュー

トワテック リサーチ

煙のせいで日本では敬遠されがちな棒灸を、より効果的に、そして使いやすくするために、独自の土器製棒灸カバーを開発・作製した齋 藤隆裕先生。現在、東京衛生学園専門学校の中医臨床センターではセンター長として、また治療院「鍼灸らせん堂」の院長として指導や治療にあたっているが、 カバーを開発し始めたのは学生時代だという。自らを“治療道具マニア”と称し、気になる道具は入手して実験してみるという齋藤先生に、棒灸の魅力や活用法 についてうかがった。

 

 

棒灸はコミュニケーションツールとしても優秀なアイテム

 

 

齋藤先生が開発した土器カバーには上部と下部にそれぞれ小さな穴があいており、下の穴から空気を取り込み、上の穴から煙が出ていくというシンプルな仕組み。棒灸をカバーに差し込む長さを変えることで、温度調節も簡単にできる。さらに素材が土であることにも、大きなメリットがあるという。

「棒灸は輻射熱で皮膚を温めます。通常の棒灸では、燃焼時に発生する熱の大半が空中に発散してしまいますが、この土器製のカバーを使うと、皮膚面以外に逃げた熱は土器に吸収されます。
そして土器が温まることで、無駄なく棒灸の燃焼を温熱刺激に変換することができるのです。熱が土器にいったん吸収されることで、優しい熱になって皮膚に照射されます。これが「土」という素材のいいところ。土器だとメンテナンスも簡単ですから、一つ作れば、一生モノですよ。たとえ何かの拍子に割れてしまっても、修理すればまた復活させられますからね」

齋藤先生は定期的に老人ホームでの訪問治療も行っているが、このカバーのおかげでお灸を使った治療も可能になったそうだ。

「はじめは、火災警報器のこともありお灸はやめてほしいと言われました。しかし、施設長にカバーを用いた棒灸を体験してもらうと『これは気持ちいい! ぜひ入居者の方にもお願いします』と、一転して許可していただきました。年配の方にとって、お灸の香りは懐かしさを想起させるものでもあるようで、とても喜んでもらえます。リラックスという意味でも効果がありますし、命門や関元を棒灸で温めた後は、皆さんとても元気になります。もちろん、火災警報器が作動するようなことは全く無いですよ(笑)」

カバーを使うことで煙が軽減され、棒灸が使える環境も増えてきた。しかし、それ以上に重要なのが、誰にでもできるようになることだという。

「『医療とは人間が発明したコミュニケーション方法の一つである』と思っています。いきものには自己治癒力がありますが、もし自己治癒力で治るなら、他者の手を借りる必要はありませんよね?
私は、文明や文化が生み出したコミュニケーションの1つが、医療なのだと考えています。これは、臨床・教育・研究に携わってきた私の、暫定的な結論でもあります。
ですから、誰かが誰かににトリートメントをする・される・したい・されたい、という思いや関係性を大切にしたいと思っています。その意味でも、このカバーを用いた棒灸は、大きな役割を果たせると感じています」

 

例えば、昨今非常に増えている在宅医療は病院を離れた現場だ。慢性病を持っている人どうしの老々介護や終末期ケアなど、深刻な問題を社会に突きつけている。誰もが利用できるような東洋医学的なケアがあれば、介護される人も介護疲れをしている家族もケア・スタッフも、たとえばこの棒灸などで心身を癒してあげることもできるのではないだろうか。
使う部位やシーンにあわせてカバーを工夫することで、棒灸の活用法はさらに広がりを見せている。

 

 

「今までも希望があれば、あちこちでカバーの作り方を教えるセミナーを開いてきましたし、小児科病棟の医師の方の要望でごく小さいサイズのものを作ってお渡ししたこともあります。患者さんも自分で作った人がたくさんいます。セミナー参加者の中には独自の工夫をして足底専用や肩上部専用のカバーを作った人もいます。
みんなあちこちで作っては、写真を撮って「先生、こんなの作ったよ」って送ってきてくれるんです。自慢の『マイ・棒灸カバー』ですって。この土器製の棒灸カバーは本当に便利なので、一度使うと手放せなくなりますよ。
なによりも、まだ現場を知らない学生たちが、みんなでワイワイと粘土をこねる。その時間が治療家になった時の喜びにつながるといいですよね。迷ったらまたみんなで粘土をこねに来なよ、って。子供のように泥まみれになるのもいいものです(笑)」


 

 

プロフィール

写真 齋藤隆裕
鍼灸師・按摩マッサージ指圧師。中国医学修士(鍼灸推拿系)。学校法人後藤学園、東京衛生学園専門学校、中医学研究所 中医臨床センター センター長。国立筑波大学 理療科教員養成施設 講師。日本中医食養学会 講師。正中山遠壽院「根本御祈祷系授的傳加行所<荒行堂>百日大寒行」東洋医学顧問。「鍼灸らせん堂」院長。『齋藤式棒灸カバー』は15年ほど前から講習会や勉強会で作製方法と施術テクニックを伝授している。
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