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連載:トーマス先生の職人気質が本を読む!

第6回 トーマス先生は辞書を片手に東洋医学の船を編む
カテゴリ: コラム

トワテック リサーチ

言葉は思考の道具である

 

 

 

私は34年間、多数の辞書を相手に暮らしてきた。来日当初は日常の「言葉の壁」にぶつかり、多くの字書類を座右に置いた。鍼灸の勉強を始めてからは、その壁は更に高くなった。何しろ「専門の壁」だ。そのまま時を経て翻訳の仕事もするようになった。今風のネット検索もなく、何を調べるにしても辞書にあたることがあたりまえだった。仕事をこなすため 多数の辞書を集めた。一種の趣味のように。

 

それらの辞書は難しい文章、特に東洋医学関連の文献や論文を読む/翻訳する際には欠かせない道具である。日英訳する際には和英東洋医学辞典が一番役に立つのだが、どう探してみても文庫本サイズの小さな一冊しか見つからない。韓国語-英語(複数)や中国語 -英語(多数)の辞典ならあるのだが……。

 

そこで翻訳作業中に調べた用語を複数のファイル形式で「メモ」をして、最終的に表計算ソフトで記録した(詳細は下 記のURLでご覧下さい)。適切な専門辞書がないため、単語や表現一つを調べるには同時に複数の辞書の使わざるを得ないし、それぞれの「検索機能」には一長一短がある。特に(!)外国人の私にとって。つまり漢字そのものや特定の漢字の読み方は知らなければ「通常」の辞書が使えない。これは勉強が足りない私と違って日本人に起きない問題でしょう。

 

但し、上記の事情を少々異なった観点から眺めてしまえば、日本人は先ず国内にいる日本人同士としか話し合いしないから、用語集などはいらないと言う見方も出来る。日本の思考、伝統、特技などを積極的世界にアピールする意思がやや乏しいように見受ける。

 

マッカーサーが戦後に捕虜がお灸で治療される場面を見て、それを「拷問」と勘違いし、鍼灸治療を「廃止」ではなく「禁止」したこともあった。個人的な意見としては、その頃に東洋医学──、取り分け日本の手法を世界に紹介するために、国家事業として用語集の作成をするべきであったと思う。

 

私が現在進めている「用語集作り」の話をすると、多くの人が首をかしげる。ある知人は「難しい」とつぶやき、学会からは「協力できない」と言う言葉を投げかけられる。また、漢方薬の名前を単語一つとして表記する学会の指示に従わなければならないので、翻訳作業中で自らの感覚で知的財産をいつも踏みにじる必要性も発生する。 その決まりに従えば、言葉を意図的分からなくなるようにしなければならない。 

Yokukansankachinpihangegotokishakuyakusan

この41文字のアルファベットをスラスラと読める人がどれだけいるだろう? 日本人であっても「あっ、あれですね」と言う反応よりも「えっ、なにこれ???」が帰って来るのが実情だ。

 

日本人でさえ分からない日本語は(漢字の分から ない)外国人がどうやって理解すればいいのでしょうか。私の感覚で言えば『メリー・ポピンズ』の"Supercalifragilisticexpialidocious" より分かり難いです。

 

話はそれましたが、漢字、ひらがな、日本語・中国語のローマ字表記、英語などから検索出来、東洋医学全般、鍼灸、漢方薬、生薬、古典、人物に関する資料を含む用 語集があれば、語学が達者でない人でも自分のHPやブログを英文にしたり、その他の形で(日本の)東洋医学の概念に関する情報発進に役に立てると思います。逆に外国人が日本の東洋医学に関して調べたい事があれば、使える資料/道具が全くない現状では大いに助かるでしょう。大げさかもしれませんが、そのような用語集(言葉の道具)は知識や情報の宝庫(=日本)を開ける鍵だと、私は考えているのです。

 

 

【用語集の作成に関して】http://www.einklang.com/glossary.htm

 

 

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プロフィール

写真 トーマス・ブラーゼイェーヴィッツ
1956年、ドイツの港町キール出身。1979年に弓道を志して来日。ドイツ語教師、英語教師を経て81年に日本鍼灸理療専門学校に入学。同校を卒業後、日産厚生会玉川病院に勤務。95年に神奈川県葉山にトーマス鍼灸院を開業。著書に『ドイツ人鍼灸師トーマス先生の話を聞いてみませんか ずっと元気にすごすための健康法』『鍼灸界の異端児』。
施設写真
トーマス鍼灸院
〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内815
TEL 046-876-3077
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