トワテック メディカルレポート

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vol.0140肩腱板損傷に伴う症状について

今回は肩腱板損傷(断裂)について少し考察してみます。

日常診療でよく遭遇する肩関節の代表的疾患の一つですが、意外にきちんと診断されていません。
その多くの理由は痛みや可動域制限といった所見にとらわれがちだからです。
ちょっと考えてみればすぐ分かりますが、この2つの症状は腱板損傷に特徴的な症状でも何でもなく多くの肩関節疾患に共通して出現します。

腱板は肩関節の回旋に関わる4つの筋肉の腱の集合体です。
それが、板のようになっているため腱板と呼ばれています。
4つの筋肉とは棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋をいい、肩を回旋させる機能があります。
また肩関節運動時の動的安定性(上腕骨頭に安定した支点を与える)に寄与しています。

損傷の原因ですが、ケガにより断裂する場合とはっきりした原因がなく断裂する場合があります。
肩の構造上の関係と腱板の老化が深くかかわっています。
このことから年齢のピークは60歳代です。
性差では男性に多く、左右で比べると右肩に多くおこります。
若い人では肩を酷使するようなスポーツの人に起こりやすいです。
腱板が損傷すると、その程度により筋力低下が生じます。
外転筋力の低下、外旋筋力の低下、さらには内旋筋力の低下も生じることがあります。
腱板損傷の診断においてはこの筋力低下が重要です。

腱板損傷には痛みを伴うと考えがちですが、炎症が起こらない限り痛みは発生しません。
MRIで腱板損傷が確認されても全く痛みがない人がいること、また手術で腱板を修復しなくても痛みが落ち着いて日常生活に支障がなくなる患者が多くいることを考えれば分かりやすいかと思います。
痛みを伴うまま時間が経過すると、拘縮や筋緊張の亢進、代償運動など様々な原因により病態が複雑化していきます。

このようなことから肩関節のリハビリはパズルを解くように少しずつ進めていく必要があります。
断裂部分が治ることはありませんが、薬物療法やリハビリによって痛みが治まり日常生活やある程度のスポーツを行うことは可能になりますが、肩の痛みや運動障害が改善しない場合手術を選択することもあります。

北村 大也先生
整形外科医

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