• インタビュー
  • 2021/10/08

リーガ初の日本人トレーナーの教え② -「ごめんな。この後にしっかり見るから」

今から20年以上前、〝プロスポーツトレーナー〟という言葉が未だ定着していなかった時代に裸一貫で異国の地に渡り、武者修行に明け暮れたひとりの日本人がいる。強豪がひしめく欧州サッカー界のクラブチームトレーナーとして数多の経験を積んだその男は、ローカルクラブを出発点にスペイン1部リーグと日本人初のプロトレーナー契約を結ぶことになる。国内では、なでしこジャパン代表選手のサポート、早稲田大学サッカー部トレーナーを務めるなど、プロスポーツトレーナーの第一線を歩み続ける山田晃広氏に、業界の発展と後進育成に懸ける熱い思いをお聞きした。
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山田 晃広株式会社The StadiuM 代表取締役 鍼灸あん摩マッサージ指圧師
1974年12月4日生まれ。スペイン1部リーグのプロトレーナー時代は、フィジカルとメンタルの両面から強豪クラブをサポート、トップアスリートから絶大な信頼を得る。これまでの豊富な経験を活かして、株式会社The StadiuMを立ち上げ、代表兼トレーナーに就任。日本初のプロスポーツトレーナーアカデミーを運営し、トレーナーを志す学生に向けた活動を精力的に行っている。


トワテック
前編で、山田先生はプロスポーツトレーナーに求められる要素の一つに、メンタリティーの重要性を挙げられました。自身の考え云々ではなく、チームを勝たせることに全力を注ぐべきであると。そうした考えは、スペインに渡航される前から確立されていたのでしょうか?
山田
いやいや、20代前半の頃は目の前の治療に一杯一杯でした。そこから経験を積んで、改めてスポーツトレーナーの役割を自問した時に「チームを勝たせるためだよな?」と気付いたのです。もちろん、怪我の予防や処置も大事ですけど、基本的にプロスポーツトレーナーの存在意義はチームを勝たせる部分にあるわけですから。そこを前提にトレーナー活動をしていると、見えてくる部分がある。勝利のためにはチームが一丸になる必要があります。
トワテック
サポートだけではなく、チームをマネジメントする能力も必要になってくる?
山田
その通りです。例えば明日の試合を怪我で出場できない選手がいたら、チームを勝たせる選手を優先的に見なければいけなくなる。その時に気遣いができなければ、「試合に出られない選手は後回しかよ!」という反応が返ってきてしまう。「怪我で辛いのに先に見ることができなくて、ごめんな。この後にしっかり見るから、少し待ってくれ。すまん!」。この言葉が言えるか否かで、チームの雰囲気、トレーナーへの信頼は大きく変わってくるんです。

トワテック
山田先生はProSTAを通して後進育成に尽力されていますが、プログラムにはプロスポーツ現場の見学やインターンシップも組み込まれていると聞きました。
山田
実際に現場を見たくても、取っ掛かりがなくてはなかなか難しいものです。株式会社The StadiuMを立ち上げた経緯には、トレーナーとアスリートの交流を生み出したい狙いがあります。整骨院さんに僕らのプログラムを導入していただければ、そこで働かれている治療家をJリーグやプロ野球BCリーグのインターンに招待します。
トワテック
プロの現場で現役アスリートと接することができる。大変貴重な経験になりますね。
山田
そこで「スポーツトレーナーの仕事は楽しいな」「インターンでは、こんなに素晴らしい経験ができるのか!」と実感してもらえたら、きっと新しい景色が見えてくると思います。将来を考えてスペインリーグに行きたい話す生徒は、実際に現地に連れて行きます。本気でプロスポーツトレーナーを目指している人間に、僕たちは協力を惜しみません。
トワテック
山田先生はプロスポーツトレーナーとして成功するためには、個人的なセンスも影響してくると思われますか?最後にお答えしづらい質問で恐縮です(笑)。
山田
技術面は一定のラインまでなら、どなたでも向上すると思います。ただ、技術だけで飛び跳ねようとすると、センスの有無に加えて相応の経験値も必要になってくる。僕が大切にしているのは、むしろ行動力だったり、気付きだったり、選手に対する素直な気持ちです。嬉しさや悲しさを素直に表現できること。相手に喜んでもらいたいと思う気持ちを人一倍持てているのなら、スポーツトレーナーとしての素質は備わっていると思いますよ。

おまけ動画「山田晃広に10の質問(後編)」


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取材
トワテック編集部(柔整チーム)
トワテックの柔整師・トレーナー担当部署。商品開発、通販サイトの運営、取材を主な業務としている。平均年齢は30代。

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