トワテック メディカルレポート

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vol.0144リスフラン靭帯損傷について

臨床の場でよくみられる足関節捻挫。
「たかが捻挫されど捻挫」
一度損傷してしまったら、しっかりと治療・予防をしないと癖や痛みが残ってしまいます。
そうならない為には、どこの部位の靭帯損傷なのかを正確に見極めなければいけません。

足部の靭帯は多数あり、その中でも一番多いのは内反捻挫による前距腓靭帯損傷ですが、今回は、軽く見られがちな足関節捻挫の中でも特に見逃されやすいリスフラン靭帯損傷をテーマにしたいと思います。
以前にもリスフラン靭帯損傷をテーマに病態と診断のポイントについて述べました。
今回は症状と治療について少し深めていきましょう。

まずリスフラン靭帯損傷のおさらいです。
解剖的にポイントとなるのが3つ。

  • リスフラン関節の中でも第1楔状骨と第2中足骨の離開が損傷の主体である。
  • 第2中足骨基部は3つの楔状骨が形成するくぼみに挟まれ、横アーチの頂点に存在。
  • 第1、第2中足骨間には靭帯は存在せず、第2中足骨基部と第1楔状骨との間を斜走して結ぶリスフラン靭帯により結合。

またリスフラン関節損傷の受傷原因は大きく分けて2つ。

  • 交通事故などによる強い外力によるリスフラン関節脱臼。
  • スポーツ特に球技系で受傷することが多いリスフラン靭帯損傷。

しかしどちらも頻度的には低く、X線での変化に乏しいので見落とされやすい疾患の1つです。
普通の捻挫と診断し治療され陳旧性へと発展しまうケースが多くあります。

治療に関して、保存療法・手術療法があります。
保存療法では第1楔状骨と第2中足骨の離開が2mm以内の損傷程度であれば、インソール装着が有効です。症状にもよりますが完全復帰まで約2カ月程です。
手術療法では断裂が明らかな新鮮損傷に対し、整復固定術を行い、完全復帰までには平均約5カ月です。
また陳旧性の例でも靭帯再建術で完全復帰には平均で約8カ月です。
その後、痛みの残存は少なく経過良好がほとんどです。

手術療法として整復後、一般的にスクリュー固定が行われてきましたが、スクリューによりリスフラン靭帯や関節軟骨を損傷してしまい、術後、関節症性変化をきたす場合もあるため、最近ではロッキングプレートでの一定期間確実に固定する方法も行われるようになりました。
診断がついても治療方法の選択に迷うことも多いため、しっかりと患者さんに対しインフォームドコンセントを行うことが大切です。

「たかが捻挫されど捻挫」
患者さんが長期間痛みに苦しまないためには、損傷部位を見逃さず、正しい診断・治療を行っていくことが重要です。

北村 大也先生
整形外科医

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