vol.0161前十字靭帯の理学所見について
前回までは前十字靭帯の解剖から、損傷までの発生機序および治療の概要まで紹介しました。
今回は損傷したかどうかの判断、すなわち理学所見のポイントについてADS(前方引き出しテスト)とLachmanテストという2つの方法を上げ、確認していこうと思います。
1. ADS(前方引き出しテスト)
方法
まず、患者さんは背臥位をとり、しっかりと寝かせます。
股関節45°屈曲、膝関節90°屈曲位にし、筋をしっかりと弛緩させましょう。
検者の坐骨結節でしっかりと足部を固定し、脛骨近位端付近を両手手掌でしっかりと把持し、脛骨を前方へ引き出します。先に健側でテストを行ない患側と比較すると良いです。
その際、関節弛緩性の確認もできます。
2. Lachmanテスト
方法
患者さんは背臥位にて膝を20~30°屈曲、軽度外旋させます。
検者は大腿遠位部を膝蓋骨直上で外側より、下腿近位端を内側より把持し、脛骨を前方へ引き出します。
脛骨の前方変位が見られれば、ACL損傷を疑います。
この肢位では、ACLにストレスを加えやすく、正常の場合しっかりとしたEnd Pointを触知できます。
このテストは、膝の機能的肢位(膝30°屈曲、軽度外旋位)で行なうため、最も信頼性が高いと言われています。
所見を正しくとるためのポイントは以下の通りです。
- 患者さんにリラックスさせ、しっかりと筋肉を弛緩させます。
- 膝の角度を正確にしましょう。
- 下腿をしっかりと手掌全体でホールドして下さい。
手の小さい女性は前腕を用いるのも良いです。
- ADSを行なう際は、検者の坐骨結節でしっかりと足部を固定します。
- Lachmanテストでは、一方をしっかりと固定し、もう一方で操作します。
- まず、健側でテストを行い、患側と比較しましょう。
さらにEnd Pointの一般的な判断は以下を参考にして下さい。
- 関節血症:+ End Point:ソフト→新鮮なACLの部分断裂を疑います。
- 関節血症:- End Point:ソフト→陳旧的な部分断裂を疑います。
- 関節血症:+ End Point:ハード→新鮮なACLの完全断裂を疑います。
- 関節血症:- End Point:ハード→陳旧的な完全断裂、関節包の損傷を疑います。
今回紹介した方法はあくまでも一般的な方法やポイントです。
他にも色々な手法がありますので興味のある方は調べてみては如何でしょうか。
- 北村 大也先生
- 整形外科医