トワテック メディカルレポート

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vol.078頚椎捻挫 最新の医学的知見

整形外科や整骨院等の治療院にとって、頚椎捻挫の診療は大きなウェイトをしめているのではないでしょうか。
なかでも交通事故による頚椎捻挫は、治療に難渋し症状が遷延化した場合、加害者や保険会社との関係などもこじれたり、本人の生活の質を落とすだけでなく社会的なトラブルになることもまれではありません。
今回は整形外科領域で頚椎捻挫がどのように考えられているか、最新の医学的知見も交えて簡単に説明していきたいと思います。

病態

頚椎捻挫の主な病態は筋や筋膜、靭帯、椎間板、関節包などの頚椎支持軟部組織の損傷で骨折は伴いません。
症状としては頚部痛と可動域制限以外にも頭痛、めまい、視力低下、しびれ、上肢痛など多彩な症状を示すこともあります。
しかし、その多くは原因としての器質的異常を見つけることが出来ません。

検査

器質的な異常が存在しないかどうかを調べることは大事です。主に用いられる検査はレントゲンとMRIです。
レントゲンでは骨傷がなければ頚椎捻挫の診断になります。
しかしそれ以外にも、加齢による骨棘の形成や靭帯の骨化、側面像での湾曲の異常がみられることが多くあります。
一般的には前弯消失(ストレートネック)や局所的な後弯変形は軟部組織損傷による一過性のものと考えられていますが、事実は違うようです。
慶応大学の松本先生らは、健常者と頚椎捻挫患者のレントゲンを比較して、両者とも湾曲異常は同程度にみられたと報告しています。

MRI検査は骨以外の軟部組織の描出に非常に有用な検査です。
麻痺や知覚鈍麻などがあり、神経症状を疑う場合には必須の検査になります。
しかし頚椎捻挫の主病変と思われる軟部組織損傷を描出することはほとんど出来ません。
また、レントゲンと同様に加齢による変化も多くみられます。椎間板変性や後方への突出、それらに伴う脊髄の圧迫などです。慶応大学の松本先生らは健常者と急性期頚椎捻挫患者(それぞれ約500名)のMRIを撮影し比較した結果を報告しています。
それによると、MRIで前出の異常を認める頻度は両群とも変わりなく、患者の自覚症状とMRIの異常所見に関連性はありませんでした。また10年後の所見も両群で変わりはありませんでした。

(その2へ続く)

北村 大也先生
整形外科医

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