トワテック メディカルレポート

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vol.0108肩鎖関節部の痛み

肩が痛いという患者さんで意外と見落とされがちな疾患が、肩鎖関節部の痛みです。
肩鎖関節の痛みの特徴は肩鎖関節部に圧痛があり、上腕骨や肩関節にあまり痛みが無いことです。
また肩鎖関節は挙上90度を超える辺りから動き始めるため、90度以上の挙上で痛みを生じることが多いです。

代表的な疾患には変形性肩鎖関節症と肩鎖関節脱臼があります。

1. 変形性肩鎖関節症

肩鎖関節の圧痛、90度以上の挙上位での痛みの出現、X線での関節性変化でほぼ診断はつきます。
治療としては保存治療が行われることが多く、鎮痛薬の内服や外用により、数ヶ月程度で症状が落ち着くことが多いです。
痛みにより生活制限が強い場合にはステロイド関節内注入を行うこともあります。
それでも疼痛と機能障害が強い場合は鎖骨外端部を切除することもあります。

2. 肩鎖関節脱臼

肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯の断裂により肩甲骨が下降し、鎖骨の上方転位が起こります。
肩鎖関節脱臼の90%は上方脱臼と言われています。
鎖骨遠位端骨折が鑑別にあがりますが類似の症状をしているので、注意が必要です。
特に鎖骨遠位端骨折は骨癒合し難く偽関節になりやすいために見逃してはいけません。

受傷機序

転倒や転落時に肩峰へ直接損傷を来す直達損傷と、手や肘をついて外力が上腕骨を介して肩峰に伝わる介達損傷に分けられます。

症状

脱臼の程度がひどい場合は、鎖骨外端が階段状に突出し鎖骨肩峰端と肩峰との間に深い溝ができます。
関節部の圧痛、肩関節の挙上外転制限があります。
ピアノキーサイン(反跳症状)は良く言われている所見ですが、患者さんが痛がりますので、あまり行わない方が良いかもしれません。

分類

I型
肩鎖関節の転位がなく、関節包や肩鎖靭帯の部分損傷はあるが関節の安定性は良好です。
II型
肩鎖関節の亜脱臼(不全脱臼)で鎖骨外端部の不安定性が出現します。関節包や肩鎖靱帯は完全に断裂していますが、烏口鎖骨靱帯の損傷はありません。
III型
肩鎖関節の完全脱臼で関節包、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯が完全断裂。ピアノキーサインが出現します。

検査

XPで、はっきり脱臼が確認出来ない時は左右を比較することも大事です。
また骨折との鑑別診断として重要です。

治療

痛みに応じて三角巾とバストバンド固定などを用います。
III度の場合は手術療法が行われることもあります。
肩鎖関節の完全な整復位を得ることは困難ですが、機能的予後は良好です。

北村 大也先生
整形外科医

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